GHRP-2とは何ですか?
GHRP-2(Growth Hormone Releasing Peptide-2、国際一般名プラルモレリン)は、6つのアミノ酸からなる合成ヘキサペプチドです。配列は D-Ala-D-2-Nal-Ala-Trp-D-Phe-Lys-NH₂ で、分子式は C₄₅H₅₅N₉O₆、分子量はおよそ 817.97 g/mol です。配列中に D体アミノ酸と非天然アミノ酸(2-ナフチルアラニン)が組み込まれている点が重要で、これは体内のペプチダーゼによる分解を受けにくくするための設計です。言い換えれば、GHRP-2はヒトの体内に存在する天然ホルモンの類似体ではなく、実験室で最適化された人工分子です。
GHRP-2は1980年代から1990年代にかけて、Cyril Bowersらの研究グループが進めた一連の構造最適化のなかから生まれました。出発点となったのは、下垂体からの成長ホルモン(GH)放出を促す最初期のペプチドであるGHRP-6です。研究者たちはGHRP-6の骨格を少しずつ書き換え、より少ない量でより強いGH放出を引き出す分子を探索しました。その系譜のなかで、GHRP-2、ヘキサレリン、そして後にイパモレリンが登場します。したがってGHRP-2は、単体の分子としてだけでなく、この分子ファミリー全体を理解するための基準点として位置づけられます。
GHRP-2がこのファミリーのなかで特異な立場にあるのは、規制上の扱いによるものです。GHRP-2は日本において成長ホルモン分泌不全症の診断用医薬品として承認されており、単回静脈内投与による下垂体刺激試験に用いられています。欧州医薬品庁(EMA)および米国食品医薬品局(FDA)による承認は、診断目的でも治療目的でも存在しません。つまりGHRP-2は、GHRP系ペプチドのなかで唯一、いずれかの国で正式な医薬品としての評価を通過した分子でありながら、その承認は極めて限定された診断用途にとどまっている、という二重の性格を持っています。
一般の読者が「GHRP-2」という語に出会う文脈は、多くの場合この診断薬としての用途ではなく、研究用化学物質として販売される製品や、複数のペプチドを組み合わせる話題のなかです。本ガイドは後者の文脈を扱いますが、そこで語られる主張の大半が、承認された診断用途とは別の、はるかに検証が乏しい領域に属することを最初に明確にしておきます。本記事は教育目的の情報提供であり、使用の推奨や用法用量の提示ではありません。
成長ホルモン分泌促進物質(GHS)とは何ですか?
成長ホルモン分泌促進物質(growth hormone secretagogue、GHS)とは、成長ホルモンそのものを外から補うのではなく、下垂体に働きかけて内因性のGH分泌を促す物質の総称です。組換えヒト成長ホルモン製剤が「ホルモンを直接与える」アプローチであるのに対し、GHSは「体自身に出させる」アプローチにあたります。この違いは理論上重要です。内因性分泌を促す経路では、GHの拍動的な分泌パターンやネガティブ・フィードバック機構が部分的に保たれる可能性があるためです。ただし、この理論上の利点がヒトで臨床的に意味のある差につながるかどうかは、別途検証を要する問題です。
GHSは大きく二つの系統に分かれます。ひとつはGHRH系で、視床下部ホルモンである成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)の受容体に作用します。セルモレリン、CJC-1295、テサモレリンがこの系統です。もうひとつがGHRP系(グレリン受容体系)で、GHRP-2、GHRP-6、ヘキサレリン、イパモレリンが属します。両者は作用する受容体も細胞内シグナル経路も異なります。
GHRP系の分子標的が明確になったのは1996年です。Howardらはヒトおよび各種哺乳類の下垂体と視床下部(弓状核、腹内側核、漏斗部)に発現するGタンパク質共役型受容体をクローニングし、これが合成GHSの標的であること、そしてGHRH受容体とは別個の受容体であることを示しました(Science, 1996)。この受容体は後にGHS-R1aと呼ばれるようになります。さらに1999年に胃から分泌される天然リガンドであるグレリンが同定され、GHS-R1aは「グレリン受容体」として理解されるようになりました。歴史的な順序が逆転していることに注意してください。合成ペプチドが先に作られ、その受容体が後から見つかり、天然リガンドが最後に判明したのです。
この経緯は、GHRP系ペプチドの薬理を理解するうえで実務的な意味を持ちます。GHS-R1aはGH分泌だけを担当する受容体ではありません。グレリン受容体であるということは、食欲、胃運動、報酬系、エネルギー代謝といった経路とも接続しているということです。したがってGHRP系ペプチドの作用を「GHを出す」だけで説明するのは不正確であり、GH以外の作用は副次的な偶発現象ではなく、標的受容体の生理機能そのものに由来する予測可能な帰結です。
GHRP-2はどのように作用するのですか?
GHRP-2はGHS-R1a(グレリン受容体)のアゴニストとして働きます。この受容体はGq/11タンパク質と共役し、ホスホリパーゼCの活性化を介してイノシトール三リン酸とジアシルグリセロールを生成し、細胞内カルシウム濃度を上昇させます。下垂体前葉のソマトトロフ(GH産生細胞)においてこの経路が活性化されると、蓄えられていたGHの開口放出が起こります。これがGHRP-2投与後、短時間でGHの急峻なピークが観察される直接的な理由です。
しかし下垂体への直接作用だけが機序ではありません。GHS-R1aは視床下部にも発現しており、GHRP系ペプチドはここで二つの追加的な作用を発揮すると考えられています。ひとつは内因性GHRH産生ニューロンの活性化、もうひとつはGH分泌を抑制する方向に働くソマトスタチンの作用に対する拮抗です。ソマトスタチンはGH分泌の「ブレーキ」にあたります。GHRP系ペプチドがアクセルを踏むと同時にブレーキを緩めるという二重の作用を持つことが、GHRH単独よりも強いGH反応が観察される薬理学的な説明とされています。
この作用の強さは、ヒトを対象とした比較研究で定量的に評価されています。Arvatらは健常な若年成人を対象に、GHRP-2とヘキサレリンを2種類の用量で静脈内投与し、GHRH、TRH、hCRHと比較しました(Peptides, 1997)。その結果、GHRP-2によるGH反応はGHRHによるものを上回り、用量依存性が認められました。同時に、GHRP-2はプロラクチン、ACTH、コルチゾールも上昇させました。重要な点は、この研究がそれらの上昇を他の既知の刺激と比較して位置づけたことです。プロラクチン放出作用はTRHより弱かった一方で、ACTHおよびコルチゾール放出作用はhCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)と同程度でした。GHRP-2の視床下部・下垂体・副腎系への影響は、わずかな随伴現象ではなく、専用の刺激試験に匹敵する規模だということです。
薬物動態の面では、GHRP-2は短時間作用型です。血中からの消失は速く、投与後まもなくGHのピークが生じ、その後基礎値へ戻ります。日本で承認されている診断試験では、単回静脈内投与後にGHを経時的に測定します。Chiharaらの検証研究では、健常者77名と、インスリン負荷試験でGHピークが低値であった患者58名を対象にGHRP-2の静脈内投与が行われ、全被験者で血清GHのピークが投与後60分以内に出現しました(European Journal of Endocrinology, 2007)。この予測可能で再現性の高い時間経過こそが、GHRP-2を診断薬として有用にしている性質です。半減期の短さは、アンチ・ドーピング分析の文脈では逆に検出を難しくする要因としても議論されてきました。
GHRP-2、GHRP-6、ヘキサレリン、イパモレリンはどう違うのですか?
この4分子は同じ受容体系統に属し、しばしば互換的に語られますが、選択性、随伴作用、そしてエビデンスの厚みにおいて明確に異なります。以下の表は、公表文献で報告されている範囲に限って整理したものです。各項目は相対的な傾向であり、個別の数値的な優劣を保証するものではありません。
| 項目 | GHRP-2 | GHRP-6 | ヘキサレリン | イパモレリン |
|---|---|---|---|---|
| 標的受容体 | GHS-R1a | GHS-R1a | GHS-R1a に加え CD36(前臨床で同定) | GHS-R1a(選択性が高いと報告) |
| 報告されたGH放出の強さ | 強い。ヒトでGHRHを上回る反応 | 中程度。この系統の出発点 | 単位量あたりでは最も強いと報告 | GHRP-6に匹敵すると報告 |
| 食欲への影響 | ヒトで摂食量の増加が確認 | 強い摂食促進として知られる | 報告あり | 最小限とされる |
| GH以外の報告された影響 | プロラクチン、ACTH、コルチゾールの上昇 | プロラクチン、コルチゾールの上昇 | プロラクチン、ACTH、コルチゾールの上昇 | ACTH、コルチゾールの有意な上昇は報告されず |
| 作用持続 | 短い(単回でGHの一過性ピーク) | 短い | 短い | 短い |
| 受容体の脱感作 | 反復投与時の減弱が議論されている | 同上 | 長期投与でGH反応の部分的減弱が実証(可逆的) | データが限定的 |
| ヒトでのエビデンス水準 | この系統で最も厚い(診断試験の検証研究を含む) | 初期の薬理研究が中心 | 健常者・高齢者での投与研究あり | 前臨床中心、ヒトデータは限定的 |
| 規制上の位置づけ | 日本で診断薬として承認。欧米では未承認 | いずれの国でも未承認 | いずれの国でも未承認 | いずれの国でも未承認 |
GHRP-2について。この4分子のなかで、ヒトでの検証がもっとも進んでいるのがGHRP-2です。診断薬としての承認プロセスを経ているため、単回投与後のGH反応の時間経過、再現性、健常者と患者の識別能について、公表された検証データが存在します。一方で、承認されているのはあくまで診断という単回の用途であり、反復投与を前提とした長期の安全性データではありません。この区別は、GHRP-2を長期にわたって使用する議論を評価するうえで決定的に重要です。承認の事実が、承認されていない使い方の安全性を裏づけることはありません。
GHRP-6について。GHRP-6はこの系統の原型であり、他のすべての分子がここから派生しました。特徴としてもっとも頻繁に挙げられるのが強い摂食促進作用で、これはGHS-R1aがグレリン受容体であることの直接的な帰結です。GHRP-2はGHRP-6より「食欲刺激が少ない」と説明されることが非常に多いのですが、この点は慎重に扱う必要があります。Laferrèreらの研究では、健常な痩せ型男性7名にGHRP-2を持続皮下投与したところ、生理食塩水と比べて自由摂取の食事量が35.9 ± 10.9%増加しました(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 2005)。GHRP-2自体がヒトで明確に食欲を刺激するのです。GHRP-2とGHRP-6を同一条件で直接比較した公表ヒト試験は確認できません。したがって「GHRP-2のほうが食欲刺激が弱い」という記述は、検証された比較ではなく、前臨床データと臨床的印象に由来する通説として読むべきです。
ヘキサレリンについて。ヘキサレリンは紙の上では単位量あたりのGH放出能がもっとも高い分子とされます。しかし同時に、反復投与による受容体の脱感作がこの系統でもっとも明確に実証された分子でもあります。Rahimらは健常高齢者12名に16週間にわたりヘキサレリンを1日2回皮下投与し、GH反応の曲線下面積が0週の19.1 ± 2.4から16週の10.5 ± 1.8 µg/L/時へと有意に低下したことを報告しました(p = 0.0003)。ただしこの減弱は部分的かつ可逆的で、投与中止から4週後には0週時点と有意差のない水準まで回復しました(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 1998)。強い初期反応と、継続によるその減衰。これがヘキサレリンの実像です。
ヘキサレリンにはもうひとつ独自の研究軸があります。CD36受容体を介した心血管作用です。Bodartらはラット心筋膜を放射性標識ヘキサレリン誘導体でラベルし、分子量約84,000の結合タンパク質を精製したところ、その配列がラットCD36と一致することを示しました。摘出灌流心においてヘキサレリンは冠灌流圧を用量依存的に上昇させ、この作用はCD36欠損マウスおよびCD36を遺伝的に欠く自然発症高血圧ラットの心臓では認められませんでした(Circulation Research, 2002)。これはGH分泌とは独立した経路です。ただし決定的な限定条件があります。これは前臨床データのみであり、ヘキサレリンの心保護作用を検証したヒト臨床試験は公表されていません。動物の摘出心臓で観察された受容体結合と血管作用を、ヒトにおける心臓への利益として語ることは、現時点では科学的に正当化されません。
イパモレリンについて。イパモレリンは、この系統が抱えていた選択性の問題に対する回答として設計されたペンタペプチドです。Raunらの原著論文は、イパモレリンがGHRP-6に匹敵するGH放出能を示す一方で、ACTHおよびコルチゾールの放出を伴わなかったと報告しています(European Journal of Endocrinology, 1998)。この選択性が、イパモレリンが旧来のGHRPに取って代わって語られるようになった理由です。ただし選択性の高さは安全性の証明ではなく、イパモレリンについてもヒトでの長期データは限定的です。イパモレリンの詳細な薬理、エビデンス、限界については、本記事で繰り返す代わりにイパモレリン専用ガイドをご参照ください。
なぜGHRH系ペプチドと組み合わせて語られるのですか?
GHRP系ペプチドは、しばしばCJC-1295のようなGHRH類似体と併せて議論されます。その根拠は薬理学的なものです。両者は異なる受容体に作用します。GHRH類似体はGHRH受容体を介してソマトトロフにGH合成と放出のシグナルを送り、GHRP系はGHS-R1aを介して放出を促すと同時にソマトスタチンによる抑制を弱めます。異なる経路への同時刺激は、単独刺激の単純な足し算を超えるGH反応を生じうるというのが、この組み合わせの理論的な前提です。
時間軸の性質も対照的です。GHRP-2は短時間作用型で、投与後まもなくGHの鋭いピークを作り、速やかに消退します。一方CJC-1295については、Teichmanらの無作為化プラセボ対照二重盲検試験で、健常成人における単回皮下投与後に血漿GH平均濃度が2倍から10倍に6日間以上、血漿IGF-I平均濃度が1.5倍から3倍に9日から11日間にわたって上昇したことが報告されています(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 2006)。短い拍動と持続的な基礎水準という、性質の異なる二つの刺激を重ねる発想が、この組み合わせが語られる背景にあります。この組み合わせの考え方そのものについてはCJC-1295とイパモレリンの組み合わせに関する記事でより詳しく扱っています。
ただし、ここで慎重さが必要です。薬理学的な相乗作用がGH曲線の上で観察されることと、それが臨床的に意味のある結果をもたらすこととは、まったく別の問題です。GHRP-2とGHRH類似体の併用について、有効性と安全性を評価した規模の大きい公表ヒト臨床試験は存在しません。オンラインで流通している併用プロトコルは、個々の分子の薬理データからの外挿と経験的な報告にもとづくものであり、規制当局の審査を通過した知見ではありません。
さらに、GH軸への持続的な介入には固有のリスクが伴います。IGF-Iの上昇が長期に維持された場合の影響、インスリン感受性への作用、既存の腫瘍性病変がある場合の懸念などは、いずれも短期のGH曲線を見ているだけでは評価できない論点です。これらはいずれも医師による評価が必要な領域であり、自己判断で扱うべき事柄ではありません。ペプチド一般の安全性の枠組みについてはペプチドの安全性に関する記事もあわせてご覧ください。
報告されている有害事象は何ですか?
GHRP-2について報告されている有害事象は、大きく三つの層に分けて考えると整理しやすくなります。第一は受容体の生理機能から予測される作用、第二は投与手技に伴うもの、第三は長期使用に関する未知の領域です。
第一の層でもっとも一貫して報告されているのが、内分泌系の非選択性です。前述のArvatらの研究が示したとおり、GHRP-2はGHだけでなくプロラクチン、ACTH、コルチゾールを上昇させ、そのACTH・コルチゾール放出作用の大きさはhCRHに匹敵しました。コルチゾールの反復的な上昇は、睡眠、血糖調節、気分、免疫機能に影響しうる経路です。プロラクチンの上昇も、持続すれば性腺機能に関連する影響が理論上懸念されます。単回の診断試験で一過性に生じる上昇と、反復投与で繰り返し誘発される上昇とを同一視することはできません。
同じ層に属するのが食欲の増加です。これはGHS-R1aがグレリン受容体であることの必然的な帰結であり、Laferrèreらの研究で健常男性における摂食量の有意な増加として定量的に確認されています。目的によっては望ましい作用となる場合もあれば、体組成の管理を意図している場合には明確な障害となる場合もあります。いずれにせよ、予測可能な薬理作用として認識しておく必要があります。
GHRP系ペプチド全般について文献や症例報告で言及されるその他の事象には、投与直後の一過性の顔面紅潮や熱感、頭部のうずくような感覚、眠気、手指のこわばりやむくみ、関節の不快感、体液貯留の徴候、そして空腹時血糖やインスリン感受性への影響などがあります。GH軸を刺激する介入全般に共通する既知の懸念として、手根管症候群様の症状と耐糖能の変化が挙げられます。非滅菌的な手技による注射部位の感染や炎症も、実務上は無視できないリスクです。
第三の層、すなわち長期使用に関する情報の欠落こそが、最大の問題です。GHRP-2について公表されているヒトデータの中心は、単回ないし短期投与の研究です。数か月から数年にわたる反復投与の安全性プロファイルは確立されていません。さらに、研究用試薬として流通する製品には純度、含量、無菌性に関する規制上の保証がなく、これは分子そのものの薬理とは独立した追加のリスク要因です。本セクションの内容は有害事象の網羅的な一覧ではありません。症状がある場合、または使用を検討している場合は、必ず医療専門家にご相談ください。
規制上とアンチ・ドーピング上の位置づけはどうなっていますか?
GHRP-2の規制上の地位は、GHRP系ペプチドのなかで唯一の例外です。日本において、GHRP-2はプラルモレリンという一般名で、成長ホルモン分泌不全症の診断薬として承認されています。単回静脈内投与により下垂体を刺激し、その後のGH反応を測定する負荷試験に用いられるもので、この用途はChiharaらによる検証研究をはじめとする公表データに裏づけられています。GHRP-6、ヘキサレリン、イパモレリンには、いずれの国においても同等の承認はありません。
ここで誤読されやすい点を明示しておきます。日本における承認は診断薬としての単回投与に限定されたものであり、成長ホルモン分泌を長期に増強する目的での使用を認めたものではありません。診断用途での承認は、反復投与の安全性についても、抗加齢や体組成の変化といった目的での有効性についても、何ら保証を与えません。欧州医薬品庁および米国食品医薬品局は、GHRP-2をいかなる適応でも承認していません。米国とEUにおいて、市場に出回るGHRP-2、GHRP-6、ヘキサレリンは研究用試薬として販売されており、ヒトへの使用を意図した医薬品ではありません。法的な扱いは国や地域によって異なります。
アンチ・ドーピングの観点では、状況は明確です。世界アンチ・ドーピング機構(WADA)の禁止表において、これらの分子はS2「ペプチドホルモン、成長因子、関連物質および模倣物」の区分、成長ホルモン放出因子に関する項に掲載されています。現行の禁止表には、成長ホルモン分泌促進物質(GHS)およびその模倣物としてアナモレリン、カプロモレリン、イブタモレン(MK-677)、イパモレリン、レノモレリン(グレリン)、マシモレリン、タビモレリンが、また成長ホルモン放出ペプチド(GHRP)としてアレキサモレリン、エキサモレリン(ヘキサレリン)、GHRP-1、GHRP-2(プラルモレリン)、GHRP-3、GHRP-4、GHRP-5、GHRP-6が名指しで列挙されています。この区分は競技会時・競技会外を問わず常に禁止されます。
競技者の方は、禁止表が毎年改訂されることに留意してください。区分の番号や物質の記載は版によって変わりうるため、判断にあたっては必ずWADAが公表している最新の禁止表原文、および所属競技団体または各国アンチ・ドーピング機関の案内をご確認ください。治療使用特例(TUE)の要否についても同様です。検出分析の技術は進歩しており、半減期が短いことは検出されないことを意味しません。実際、GHRP系ペプチドとその代謝物を尿中で同定する質量分析法が複数公表されています。
これらのペプチドは時間軸でどう記録されるのですか?
研究文脈でGH分泌促進ペプチドを扱う場合、記録すべき情報は投与に関する事項だけではありません。短時間作用型の分子では、測定のタイミングが結果の解釈を大きく左右します。GHRP-2投与後のGHピークが比較的早期に出現することは診断試験の検証研究で確認されており、同じ理由から、採血や評価の時点がずれれば観察される値はまったく異なるものになります。記録が時系列として残っていなければ、後から解釈を組み立て直すことはできません。
実務的に意味のある記録項目は、投与の日時と間隔、使用した溶解済みバイアルの調製日と保管条件、客観的に測定できる指標(体重、体組成、睡眠時間と睡眠の質、空腹時血糖など)、主観的な変化(空腹感の強さ、関節の不快感、むくみの自覚、日中の眠気)、そして医療者の指示のもとで実施された場合の血液検査の結果です。特にIGF-Iやコルチゾールのように、医師の評価を要する指標については、いつ測定したかという文脈情報がなければ数値そのものに意味がありません。
再構成の計算や投与記録の管理には、専用のツールを用いると誤記や記憶違いを減らせます。当サイトではGHRP-2用の計算ツール、GHRP-6用の計算ツール、ヘキサレリン用の計算ツールを提供しています。これらは記録と計算を補助する道具であり、使用を推奨するものでも、適切な量を判断するものでもありません。本記事および当サイトのツールは、いかなる用法用量も提案しません。
より体系的に複数の項目を追跡したい場合は、Peptide Labアプリケーションで再構成計算と記録管理を一箇所にまとめることができます。なお、当カタログにはGHRP-2、GHRP-6、ヘキサレリンの取扱いはありません。本記事に購入先へのリンクが含まれていないのはそのためです。
まだ分かっていないことは何ですか?
GHRP-2に関する文献を公平に読むと、確立された事実と未検証の主張との間に大きな隔たりがあることが分かります。確立されているのは、GHS-R1aを介した作用機序、単回投与後のGH反応の時間経過と再現性、プロラクチン・ACTH・コルチゾールの随伴上昇、ヒトにおける摂食量の増加、そして日本における診断薬としての承認です。これらはいずれも査読を経た公表データに支えられています。
一方、未確立の領域は広範です。第一に、長期反復投与の安全性プロファイルが存在しません。数か月以上にわたる投与を系統的に評価した公表ヒト試験がないため、内分泌系、代謝、心血管系への累積的な影響は推測の域を出ません。第二に、受容体の脱感作の程度と時間経過について、GHRP-2固有のデータが不足しています。ヘキサレリンでは16週間の投与で部分的かつ可逆的な減弱が実証されましたが、この所見がGHRP-2にそのまま当てはまるかどうかは検証されていません。
第三に、この系統の4分子を同一条件で直接比較したヒト試験がほとんどありません。GHRP-2とヘキサレリンを比較したArvatらの研究は数少ない例外ですが、GHRP-6やイパモレリンを含めた4者の同時比較、とりわけ食欲への影響を主要評価項目とした比較は確認できません。本記事の比較表が個々の研究の統合にもとづく相対的な整理にとどまるのは、この理由によります。第四に、ヘキサレリンのCD36経路を介した心血管作用は前臨床の段階にとどまり、ヒトでの臨床的意義は未知です。
第五に、体組成、筋力、運動能力、回復、睡眠の質といった、実際に関心を集めている評価項目について、GHRP-2の効果を検証した規模の大きい無作為化比較試験は公表されていません。GH曲線が上昇することと、こうした臨床的な結果が改善することとの間には、検証されていない大きな論理的飛躍があります。GH分泌促進物質の開発史は、GH曲線の改善が臨床的な利益に結びつかなかった例を繰り返し記録してきました。
医療上の注意事項: 本記事は教育および情報提供を目的としたものであり、医学的助言ではありません。GHRP-2は欧州および米国において治療目的で承認されておらず、研究用物質として扱われています。日本における承認は診断用途に限定されます。健康状態、薬剤、サプリメントに関する判断は、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。競技者の方は、これらの物質がWADA禁止表に掲載されていることにご留意ください。法的な取扱いは国および地域によって異なります。
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よくある質問
GHRP-2は本当に日本で承認されているのですか?
GHRP-2はGHRP-6より本当に食欲を刺激しないのですか?
GHRP-2とイパモレリンの最大の違いは何ですか?
ヘキサレリンには心臓を保護する作用があるのですか?
なぜGHRP-2はCJC-1295のようなGHRHペプチドと一緒に語られるのですか?
GHRP-2はドーピング検査で禁止されていますか?
GHRP-2で報告されている副作用にはどのようなものがありますか?
GHRP-2はどのように保管し、記録すればよいですか?
参考文献
- Arvat E, et al. (1997). Effects of GHRP-2 and hexarelin, two synthetic GH-releasing peptides, on GH, prolactin, ACTH and cortisol levels in man. Comparison with the effects of GHRH, TRH and hCRH. Peptides.
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- Chihara K, et al. (2007). A simple diagnostic test using GH-releasing peptide-2 in adult GH deficiency. European Journal of Endocrinology.
- Howard AD, et al. (1996). A receptor in pituitary and hypothalamus that functions in growth hormone release. Science.
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