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IGF-1
LR3

IGF-1 LR3

Long R3 Insulin-like Growth Factor-1(Long [Arg3] IGF-I、LongR3-IGF-I)

9117.60 g/mol 分子量
C₄₀₀H₆₁₉N₁₁₁O₁₁₅S₉ 分子式
研究用試薬。ヒトへの使用について承認なし 規制ステータス
83アミノ酸。ヒトIGF-1(70アミノ酸)のN末端にブタ成長ホルモン由来配列を含む13残基の延長部分を付加し、3位のグルタミン酸(Glu3)をアルギニン(Arg)に置換した組換えアナログです。
IGF-1 LR3 Photo: George Shervashidze

IGF-1 LR3とは何ですか?

IGF-1 LR3(Long R3 IGF-1、文献上はLongR3-IGF-IまたはLong [Arg3] IGF-Iと表記されます)は、ヒトのインスリン様成長因子1(IGF-1)をもとに1990年代初頭に設計された組換えタンパク質です。天然のヒトIGF-1が70アミノ酸であるのに対し、IGF-1 LR3は83アミノ酸からなり、分子量は約9117.60 g/molとされています。設計の目的は、IGF-1の生物活性を保ちながら、血中でIGF-1を捕捉するIGF結合タンパク(IGFBP)との結合を弱めることでした。

この分子が最初に報告されたのは、Francisらが大腸菌の融合タンパク発現系を用いて複数のIGF-1アナログを作製した1992年の研究です。この論文では、N末端延長型のLong IGF-Iと、その3位を置換したLong [Gly3]-IGF-IおよびLong [Arg3]-IGF-Iが比較され、IGFBPへの結合低下と受容体結合のそれぞれが生物活性の増強にどの程度寄与するかが検討されました。現在「IGF-1 LR3」として流通している分子は、このLong [Arg3]-IGF-Iに相当します。

重要なのは、この分子が治療薬として開発されたものではないという点です。IGF-1 LR3が実際に商業的な役割を果たしてきたのは、抗体や組換えタンパク質を生産する哺乳類細胞の無血清培養という産業領域です。培地に加える成長因子としてインスリンより効率がよいことから、CHO細胞やHEK293細胞の培養サプリメントとして販売されてきました。研究用試薬のカタログに掲載されているのも、この用途を前提としています。

一方で、この分子は筋肉増強を目的とした非正規流通品としても出回っており、アンチ・ドーピング分析の文献でも「ヒトへの使用は承認されていないが、ボディビル向けの闇市場製品として容易に入手できる」と明確に記述されています。つまりIGF-1 LR3を語るときには、細胞培養用試薬としての確立した実績と、ヒトへの使用に関する科学的根拠の不在という、まったく性質の異なる2つの文脈を混同しないことが出発点になります。

天然のIGF-1とは何が違うのですか?

構造上の違いは2点に集約されます。第一に、N末端への13残基の延長配列の付加です。この延長部分はブタ成長ホルモンのN末端側配列に由来する断片を含み、大腸菌での融合タンパク発現を成立させるための設計上の産物でもありました。第二に、成熟IGF-1の3位のグルタミン酸(Glu3)をアルギニン(Arg)に置換している点です。名称の「R3」はこのArg3置換を、「Long」はN末端延長を指しています。

この2つの改変がもたらす機能的な帰結は、IGFBPへの親和性の低下です。生体内のIGF-1は、ほとんどが遊離型ではなく、IGFBP(特にIGFBP-3)および酸不安定サブユニット(ALS)と三元複合体を形成して循環しています。IGFBPはIGF-1の貯蔵庫として働き、受容体へのアクセスを制限し、血中からの消失を遅らせるという複数の役割を担っています。IGF-1のN末端領域はIGFBPとの結合面の一部であり、ここを改変するとIGFBPによる捕捉から逃れやすくなります。

Francisらの1992年の研究は、まさにこの点を分解して評価したものでした。IGFBP結合の低下と受容体結合能の変化のどちらが活性増強に効いているのかを比較し、IGFBPへの結合が弱いアナログが細胞アッセイで高い効力を示すことを示しました。さらにTomasらは1996年のラットの研究で、IGFBPへの結合が弱いIGF-1アナログが持続注入だけでなく皮下注射でも天然IGF-1より高い効力を維持することを報告しています。

ここで注意が必要なのは、「IGFBPを回避する」ことが単純に「よりよい」ことを意味しないという点です。IGFBPはIGF-1のシグナルを空間的にも時間的にも制御する装置であり、その制御を外すことは、代謝作用(特にインスリン様の血糖低下作用)も同時に脱抑制することになります。実際、後述するようにIGFBP結合が弱いアナログはブタやマーモセットで天然IGF-1より強く持続的な低血糖作用を示しました。設計上の「利点」と生理学的な「リスク」は、同じ構造変化から生じています。

項目天然ヒトIGF-1IGF-1 LR3
アミノ酸数7083
3位の残基グルタミン酸(Glu)アルギニン(Arg)
N末端延長なし13残基
IGFBPへの親和性高い低下
ヒトでの承認メカセルミンとして限定適応ありなし

IGF-1 DESとはどう違うのですか?

IGF-1 DES(正式にはdes(1-3)IGF-I)は、IGF-1 LR3と並んで「IGFBPに結合しにくいIGF-1アナログ」として文献に登場するもう一つの分子です。ただしアプローチは正反対です。IGF-1 LR3がN末端に配列を足すことでIGFBP結合を弱めるのに対し、IGF-1 DESはN末端の最初の3残基(Gly-Pro-Glu)を削ることで同じ目的を達成します。結果として67アミノ酸の短縮型になります。

des(1-3)IGF-Iは完全な人工物ではなく、ウシやヒトの組織から分離された天然に存在する変異体としても報告されてきました。この点はIGF-1 LR3との重要な違いです。IGF-1 LR3のN末端延長配列は発現系の設計に由来する非生理的な構造であり、生体内に対応物は存在しません。

両者はしばしば同じ実験のなかで並べて評価されています。Tomasらの一連の研究では、LR3IGF-Iとdes(1-3)IGF-Iがラット、ブタ、マーモセットにおいて天然IGF-1と比較され、いずれもIGFBP結合の低下に対応して効力が高まる一方、低血糖作用も強まることが示されました。またアンチ・ドーピング分析の分野では、LongR3-IGF-I、des(1-3)-IGF-I、R3-IGF-Iの3種が同一の質量分析法で同時に検出対象とされており、規制上も同じカテゴリーに属する分子群として扱われています。

なお「R3-IGF-I」という第三の分子も存在します。これはN末端延長を持たず、3位のArg置換のみを持つ70アミノ酸のアナログです。名称が似ているため混同されやすいですが、Long R3(=IGF-1 LR3)とR3は別物です。文献を読む際には、「Long」の有無が構造的に13残基の差を意味することを意識してください。

メカセルミンとIGF-1 LR3は同じものですか?

いいえ、別物です。この区別は本記事でもっとも重要な点であり、情報源を評価する際の基準にもなります。

メカセルミン(mecasermin、製品名Increlex)は、組換えDNA技術で製造された天然配列そのままのヒトIGF-1です。構造改変はありません。米国FDAは2005年8月30日にメカセルミンを承認し、適応は「重症原発性IGF-1欠損症(severe primary IGF-1 deficiency)による成長障害」および「成長ホルモン遺伝子欠失により成長ホルモンに対する中和抗体を発生した小児」に限定されています。欧州でも同様に、重症原発性IGF-1欠損症を対象とした希少疾病用医薬品として承認されました。適応は極めて狭く、身長増加を目的とした一般的な使用は承認範囲外です。

メカセルミンには、規制当局に審査された臨床試験の蓄積があります。Chernausekらは、成長ホルモン不応性による重症IGF-1欠損症の小児76名に対して最長12年間の組換えヒトIGF-1治療を行った長期データを2007年に報告しています。さらに欧州のIGFD登録(Eu-IGFD Registry)では306名が登録され、安全性が実地データとして追跡されています。承認薬とは、こうした前向きデータ、添付文書、副作用報告体制、製造品質基準がそろっている状態を指します。

IGF-1 LR3にはこのいずれも存在しません。構造改変されたアナログであり、いかなる規制当局からもヒトへの使用を承認されていません。ヒトを対象とした前向き臨床試験の公表データも、規制当局が審査した安全性情報も、標準化された製品仕様もありません。したがって「メカセルミンで示された有効性や安全性プロファイル」をIGF-1 LR3に読み替えることは、科学的に成立しません。IGFBP結合の違いは、まさに体内での分布と代謝作用の違いを意図した改変だからです。

研究用ペプチド全般の安全性の考え方については、ペプチドの安全性に関する解説も参考になります。なお、規制状況は国や地域によって異なり、研究用試薬としての販売が認められている場合でもヒトへの使用は別の規制対象となります。

GH/IGF-1軸のなかでどこに位置するのですか?

IGF-1 LR3を理解するには、それが作用する内分泌軸の構造を押さえておく必要があります。視床下部が成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)とソマトスタチンを分泌し、下垂体前葉からの成長ホルモン(GH)分泌を調節します。GHは主に肝臓に作用してIGF-1の産生を促し、循環IGF-1はIGFBP-3とALSとの三元複合体として全身に運ばれます。そしてIGF-1は視床下部と下垂体に負のフィードバックをかけ、GH分泌を抑制します。

この軸のどこに介入するかで、化合物の性質はまったく変わります。CJC-1295やテサモレリンはGHRH類似体として、イパモレリンやGHRP-2はグレリン受容体作動性の成長ホルモン分泌促進薬(secretagogue)として、いずれも内因性のGH分泌を刺激する上流での介入です。この場合、下垂体の分泌能力、ソマトスタチンによる抑制、IGF-1による負のフィードバックといった生理的な制御機構が残ります。

IGF-1 LR3はこれとは逆に、軸の最下流で外部からIGF-1受容体を刺激します。上流の制御機構を経由しないため、生理的なフィードバックによる自動的な歯止めが働きません。それどころか、外来IGF-1シグナルは軸に対して抑制方向のフィードバックをかけます。Dunaiskiらは、ブタにLong [R3] IGF-I(180 µg/kg/日)を4日間注入した実験で、平均血中GH濃度が23%低下し、GHピークの曲線下面積が60%減少したことを報告しました。同時に1日平均体重増加量、飼料摂取量、血中IGFBP-3、内因性IGF-1、インスリン濃度も低下しています。

この結果は直感に反するように見えるかもしれません。成長因子を投与したのに成長が抑制されたのです。著者らの観察は、外来アナログが内因性のGH/IGF-1軸を抑制し、IGFBP-3の低下を通じて内因性IGF-1のプールも減少させたことを示唆しています。上流介入と下流介入を「どちらもIGF-1を上げる手段」として同列に並べる説明が、いかに単純化されすぎているかがわかります。異なる作用機序を持つ化合物の比較については、筋成長と回復に関するペプチドの概説も参照してください。

研究では何が示されているのですか?

IGF-1 LR3に関するエビデンスは、細胞培養と動物実験という2つの領域に事実上限定されています。それぞれの到達点と限界を分けて見ていきます。

細胞培養の領域では、IGF-1 LR3の有用性は確立しています。VoorhammeとYandellは2006年、LONG R3 IGF-Iが無血清培養のHEK293細胞においてインスリンや天然IGF-1より強力な増殖・生存因子として働き、CHO細胞の無血清培地ではインスリンに必要な濃度の少なくとも200分の1の濃度で増殖と生存を支持できることを報告しました。この分子が長年商業的に供給されてきた根拠はここにあります。ただしこれはバイオリアクター内の細胞に関する知見であり、生体の生理に翻訳できるものではありません。

動物実験の領域では、複数の種で代謝作用と成長への影響が検討されてきました。Tomasらは1996年、IGFBPへの結合が弱いIGF-1アナログが、持続注入だけでなく皮下注射という投与経路でも天然IGF-1を上回る効力を維持することをラットで示しました。1997年には、ブタとマーモセットザルにおいてこれらのアナログが天然IGF-1より強く持続的な血糖低下作用を示すことを報告しています。前述のDunaiskiらのブタの研究では、成長そのものは促進されず、GH/IGF-1軸の抑制が観察されました。

ここから読み取れる全体像は、「筋肉が増える」という単純な物語ではありません。動物データは、IGFBP回避によって代謝作用(インスリン様作用)が確実に増強されることを一貫して示す一方、成長促進効果については種、年齢、投与様式、栄養状態によって結果が分かれ、場合によっては成長が抑制されることも示しています。

そして決定的な空白があります。IGF-1 LR3について、ヒトを対象とした有効性・安全性の前向き臨床試験は公表されていません。体組成、筋力、筋横断面積、回復といったアウトカムをヒトで評価した査読付きデータは存在しません。動物での前臨床所見をヒトの効果として提示している情報源は、その飛躍を明示していない限り信頼できないと判断してよいでしょう。ペプチドとアナボリックステロイドを比較する際のエビデンスの質の問題は、ペプチドとステロイドの比較でも扱っています。

体内動態について何がわかっているのですか?

このセクションは、IGF-1 LR3に関する情報のなかでもっとも誤った数値が流通している領域です。結論を先に述べます。ヒトにおけるIGF-1 LR3の半減期を示した査読付きの薬物動態試験は、公表されていません。

販売サイトや二次的な解説記事では「半減期20から30時間」という数値が頻繁に引用されています。しかしこの数値について、確認可能な一次文献を特定することはできません。出典が示されないまま複製され続けている数値であり、本記事ではこれを採用しません。数値の出所を追えないという事実そのものが、この分子に関する情報環境の状態を示しています。

混同の背景として参考になるのが、内因性IGFの動態に関する古典的な研究です。Gulerらは1989年、健康成人2名に放射標識したIGF-IおよびIGF-IIを単回投与し、遊離型の見かけの半減期が10から12分、結合タンパクとの複合体では画分により20から30分および12から15時間であったと報告しました。ここでの「20から30分」という値が、どこかの段階で単位を誤って「20から30時間」として伝播した可能性は否定できません。いずれにせよ、これらは天然のヒトIGF-IおよびIGF-IIを対象とした、被験者2名の小規模な標識トレーサー研究の値であり、構造改変されたIGF-1 LR3に当てはめられるものではありません。

理論的な推論はできます。IGFBPへの親和性が低ければ、三元複合体による血中滞留の延長という主要な保護機構を利用できません。一方で、IGFBPに捕捉されないぶん受容体や組織へのアクセスは早まります。この2つの効果がヒトでどのように差し引きされるかは、実測されない限り予測できません。動物データからは、消失が単純に遅くなるわけではないものの、生物学的な作用時間は天然IGF-1より延長しうることが示唆されますが、これは種を越えて外挿できる結論ではありません。

希釈や濃度の計算といった実務的な疑問をお持ちの場合は、専用ページのIGF-1 LR3 計算ツールをご利用ください。本記事はこの分子の科学的背景の整理に限定しています。

文献で議論されているリスクは何ですか?

IGF-1 LR3自体のヒト安全性データが存在しないため、リスクの議論は必然的に2つの間接的な情報源に依拠します。すなわち、承認された組換えヒトIGF-1(メカセルミン)の臨床安全性データと、IGF-1受容体シグナル伝達に関する基礎生物学です。いずれも直接の証拠ではないことを明記した上で整理します。

低血糖は、文献上もっとも一貫して記録されているIGF-1関連の有害事象です。IGF-1受容体とインスリン受容体は構造的に近縁で、IGF-1は高濃度ではインスリン受容体にも作用しうるため、血糖低下作用は薬理学的に予測される帰結です。欧州のEu-IGFD登録データでは、重症原発性IGF-1欠損症患者のうち26.3%(304名中80名)に治療に関連した低血糖イベントが記録されました。低年齢、身長、低いIGFBP-3濃度がリスクを高める要因として示唆されています。IGF-1 LR3に関して特に問題となるのは、IGFBP結合の低下がまさにこの作用を増強する方向に働く点です。Tomasらがブタとマーモセットで、IGFBPに結合しにくいアナログが天然IGF-1より強く持続的な低血糖作用を示したと報告したのは、この懸念を裏づける前臨床所見です。臨床的な監視体制のない状況では、この作用は重大な危険となりえます。

増殖シグナルとがんに関する論点は、慎重に区別して述べる必要があります。IGF-1受容体は事実上すべての細胞種に発現するチロシンキナーゼ型受容体で、PI3K/AKT経路とMAPK経路を介して細胞増殖とアポトーシス抑制を促します。Pollakによる総説は、インスリンおよびIGFシグナル伝達系が新生物の生物学において果たす役割を包括的に論じています。疫学的には、Knuppelらが英国UKバイオバンクで30種のがんを対象に行った前向き解析において、循環IGF-I濃度が大腸がん、乳がん、前立腺がんのリスクと正の関連を示す一方、より稀ながん種についてのエビデンスは限定的であると報告しています。

ここで越えてはならない一線があります。これらは内因性IGF-1濃度の個人差に関する観察研究であり、IGF-1 LR3の使用がヒトのがんを引き起こすことを示したものではありません。観察研究の関連は因果関係を証明せず、生理的範囲内の変動に関する知見を外来アナログの薬理学的曝露に外挿することもできません。同時に、現在得られている情報からこのリスクを否定することもできません。正確に言えるのは、IGF-1受容体を介した増殖シグナルを長期的に外部から増強した場合の腫瘍学的帰結は、ヒトで評価されていない、ということです。

そのほか、メカセルミンの臨床経験では扁桃・アデノイド肥大、注射部位のリポヒパートロフィー、頭蓋内圧亢進などが報告されており、IGF-1受容体作動性の作用に共通して想定すべき事象として押さえておく価値があります。医療上の注意:本記事は教育目的の情報提供であり、医学的助言ではありません。健康に関する判断は必ず資格を持つ医療専門職に相談してください。

アンチ・ドーピング規則上の扱いはどうなっていますか?

世界アンチ・ドーピング機構(WADA)の禁止表において、IGF-1およびそのアナログはS2区分「ペプチドホルモン、成長因子、関連物質および模倣物質」に分類されています。より具体的には、成長因子および成長因子調節因子を扱う小区分(S2.3)に、「インスリン様成長因子1(IGF-1、メカセルミン)およびそのアナログ」として明記されています。この区分には機械的成長因子(MGFs)、血小板由来成長因子(PDGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、チモシンβ4およびその誘導体なども含まれます。

実務上重要な点は次の3つです。第一に、S2区分の物質は常時禁止です。競技会時のみでなく、競技会外でも禁止されます。第二に、これらは「特定物質」ではない物質として扱われるため、規則違反が認定された場合の制裁は厳格になります。第三に、IGF-1 LR3は名称に「IGF-1」を含まない別名で流通していても、アナログとして禁止表の対象に含まれます。命名を変えることで規制を回避できるという理解は誤りです。

検出技術も整備されています。Mongonguらは2021年、免疫精製とnano-LC/高分解能質量分析を組み合わせた手法により、LongR3-IGF-I、des(1-3)-IGF-I、R3-IGF-Iを血中で検出・区別する方法を検証し、in vivoおよびin vitro実験によってこれらの使用がアンチ・ドーピング検査で検出可能であることを示しました。同論文は、これらの物質がヒトへの使用を承認されていないにもかかわらずボディビル向けの闇市場製品として入手可能である現状にも言及しています。つまり構造改変されたアナログであっても分析的に識別されうる状況にあります。

競技者にとっての帰結は明確です。IGF-1 LR3は、競技レベルにかかわらず、アンチ・ドーピング規則の適用を受ける者が使用してはならない物質です。治療使用特例(TUE)はメカセルミンの承認適応のような明確な医学的必要性がある場合に限られた枠組みであり、未承認アナログがその対象になることは想定されていません。なお禁止表は毎年改訂されるため、最新版を必ずWADAまたは各国アンチ・ドーピング機関の公表情報で確認してください。

まだわかっていないことは何ですか?

科学的なリファレンスとして価値があるのは、判明していることの一覧だけではありません。何が空白であるかを正確に示すことも同じくらい重要です。IGF-1 LR3については、この空白が異例なほど大きいのが実情です。

ヒトの薬物動態が完全に未知です。吸収、分布、代謝、排泄のいずれについても、査読付きの測定値がありません。半減期、血中濃度推移、組織分布、蓄積の有無は推測の域を出ません。前項で述べたとおり、流通している数値には特定可能な一次文献がありません。

ヒトでの有効性が未検証です。筋量、筋力、腱や靭帯の修復、体組成といったアウトカムについて、IGF-1 LR3を対象とした対照試験は存在しません。細胞培養での強力な増殖支持作用と、生体における機能的な改善は別の問題です。動物データは代謝作用の増強を一貫して示す一方、成長促進については条件依存的で、抑制方向の結果も報告されています。

長期安全性が未評価です。低血糖の頻度と重症度、IGF-1受容体シグナルの持続的な増強が内分泌軸や組織リモデリングに与える影響、腫瘍学的帰結について、ヒトのデータはありません。さらに、IGF-1シグナルの増強が骨、心筋、網膜、腎臓といった受容体を発現する組織にどのような長期的影響を及ぼすかも、この分子については検討されていません。

製品としての同一性が保証されません。これは科学的な不明点というより構造的な問題ですが、無視できません。研究用試薬として販売される83アミノ酸のタンパク質は、純度、正しい折りたたみ構造、エンドトキシン含量、分解産物のプロファイルが供給元によって大きく異なりえます。細胞培養用グレードの品質基準は、ヒトへの使用を前提とした注射剤の基準とは別物です。表示された分子が実際にどの程度の品質で含まれているかを、購入者が独立に検証する手段は通常ありません。

以上を踏まえると、IGF-1 LR3の現在の位置づけは明確です。細胞培養用の確立した試薬であり、IGFBP生物学を研究するための有用な薬理学的ツールであり、そしてヒトへの使用に関しては前臨床段階にとどまる化合物です。この3つの側面を混同しないことが、この分子に関する情報を読み解く際のもっとも実用的な指針になります。

免責事項:本記事は教育および情報提供のみを目的としています。IGF-1 LR3はヒトへの使用について承認されておらず、本記事は使用を推奨するものではありません。法的な取扱いは国や地域によって異なります。動物および細胞実験の知見はヒトでの効果や安全性を保証しません。健康に関するいかなる判断も、資格を持つ医療専門職にご相談ください。

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よくある質問

IGF-1 LR3はIGF-1と同じものですか?
いいえ、別の分子です。天然のヒトIGF-1は70アミノ酸ですが、IGF-1 LR3は83アミノ酸で、N末端に13残基の延長配列を持ち、3位のグルタミン酸がアルギニンに置換されています。この改変によりIGF結合タンパク(IGFBP)への親和性が低下します。同じIGF-1受容体に作用しますが、血中での挙動と代謝作用の強さは異なります。
IGF-1 LR3はヒトでの使用が承認されていますか?
いいえ。いかなる規制当局からもヒトへの使用を承認されていません。承認されているのは組換えヒトIGF-1である「メカセルミン」(製品名Increlex)で、米国FDAが2005年に重症原発性IGF-1欠損症による成長障害という限定的な適応で承認したものです。IGF-1 LR3は研究用試薬として販売されており、主要な用途は生物医薬品製造における細胞培養です。
IGF-1 LR3の半減期はどのくらいですか?
ヒトにおける半減期を示した査読付きの薬物動態試験は公表されていません。販売サイトで見かける「20から30時間」という数値には確認可能な一次文献がなく、本記事では採用していません。参考として、Gulerらが1989年に健康成人2名で報告した天然IGFの見かけの半減期は、遊離型で10から12分、結合タンパク複合体で20から30分および12から15時間でしたが、これは構造改変されたアナログには適用できません。
IGF-1 LR3はメカセルミンの代わりになりますか?
いいえ。メカセルミンは天然配列のヒトIGF-1で、臨床試験、規制当局の審査、添付文書、医薬品製造基準を備えた承認薬です。IGF-1 LR3は構造改変されたアナログで、そのいずれも持ちません。IGFBP結合の違いは体内での分布と代謝作用を変えることを意図した改変であるため、メカセルミンで得られた有効性や安全性のデータをIGF-1 LR3に読み替えることはできません。
IGF-1 LR3は筋肉を増やすことが証明されていますか?
ヒトでは証明されていません。筋量、筋力、体組成などのアウトカムをIGF-1 LR3で評価した対照臨床試験は存在しません。動物実験では結果が一様ではなく、Dunaiskiらのブタの研究ではLong [R3] IGF-Iの4日間注入により1日平均体重増加量と飼料摂取量が低下し、平均血中GH濃度が23%減少しました。細胞培養での強力な増殖支持作用は、生体での機能的改善とは別の問題です。
IGF-1 LR3は低血糖を起こしますか?
IGF-1受容体はインスリン受容体と近縁であり、血糖低下作用は薬理学的に予測される帰結です。欧州のIGFD登録では、承認薬である組換えヒトIGF-1の治療を受けた重症原発性IGF-1欠損症患者の26.3%(304名中80名)に治療関連の低血糖が記録されました。さらにTomasらは、IGFBPに結合しにくいアナログがブタとマーモセットで天然IGF-1より強く持続的な血糖低下作用を示したと報告しています。医学的な監視のない状況では重大な危険となりえます。
IGF-1 LR3はがんリスクを高めますか?
この問いに対する直接の答えは存在しません。Knuppelらの英国UKバイオバンク解析では、循環IGF-I濃度が大腸がん、乳がん、前立腺がんのリスクと正の関連を示しましたが、これは内因性IGF-1濃度の個人差に関する観察研究であり、外来アナログの使用による因果関係を示すものではありません。同時に、現在のデータからリスクを否定することもできません。IGF-1受容体シグナルを長期的に外部から増強した場合の腫瘍学的帰結は、ヒトで評価されていないというのが正確な現状です。
IGF-1 LR3はドーピング検査で検出されますか?
はい。IGF-1とそのアナログはWADA禁止表のS2区分(ペプチドホルモン、成長因子、関連物質および模倣物質)に含まれ、成長因子および成長因子調節因子の小区分に明記されており、常時禁止されています。Mongonguらは2021年、免疫精製と高分解能質量分析を組み合わせた手法でLongR3-IGF-I、des(1-3)-IGF-I、R3-IGF-Iを血中で検出・区別できることを検証しました。禁止表は毎年改訂されるため、最新版の確認が必要です。

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