「次世代インクレチン」とは何を指すのか?
セマグルチドとチルゼパチドが代謝性疾患領域の標準を書き換えたあと、開発の焦点は「受容体をいくつ、どの組み合わせで狙うか」に移りました。その流れの象徴がレタトルチドのようなトリプルアゴニストですが、実際に臨床開発が進んでいるパイプラインはそれだけではありません。本記事で扱うスルボデュチド(survodutide)、マズデュタイド(mazdutide、maxdutideとも表記されます)、カグリリンチド(cagrilintide)は、いずれもレタトルチドとは別の設計思想をもつ分子です。
ここで最初に強調しておきたいのは、この3つを「同じカテゴリの競合品」として並べるのは正確ではないという点です。スルボデュチドとマズデュタイドはグルカゴン受容体とGLP-1受容体を同時に活性化するデュアルアゴニストで、設計上は近い親戚にあたります。一方カグリリンチドはインクレチンではなくアミリンという別のホルモン系のアナログであり、作用点も併用の前提もまったく異なります。受容体を確認せずに3分子を横並びにした情報は、この時点ですでに誤っています。
もう一点、しばしば混乱を招くのが表記の揺れです。検索では「maxdutide」という綴りが散見されますが、正式な一般名はmazdutide(マズデュタイド)で、開発コードはIBI362およびLY3305677です。中国のInnovent BiologicsとEli Lillyが共同開発しており、綴りの違いは同一分子を指しています。
この記事の目的は、各分子を「標的受容体」と「実際に到達した臨床試験フェーズ」という2つの軸で正確に位置づけ、どれがどこで承認され、どれがどこでも承認されていないのかを明確にすることです。インクレチン系の基礎についてはGLP-1の基礎ガイドとGLP-1受容体作動薬の総論を併せてご覧ください。
免責事項:本記事は教育目的の情報提供です。特定の製品の使用を推奨するものではなく、用量に関する助言も含みません。
デュアルアゴニストとトリプルアゴニストはどう違うのか?
アゴニストとは、受容体に結合してその受容体本来のシグナルを立ち上げる分子のことです。セマグルチドはGLP-1受容体だけに作用するシングルアゴニストです。チルゼパチドはGLP-1受容体とGIP受容体の2つに作用するデュアルアゴニストで、レタトルチドはそこにグルカゴン受容体を加えたトリプルアゴニストとして第2相まで検討されています。
重要なのは、「作用する受容体が多いほど強い」という単純な話ではないことです。ペプチドの設計では、各受容体に対する相対的な力価(バランス)が臨床的な性質を決めます。同じ「GLP-1とグルカゴンのデュアルアゴニスト」でも、グルカゴン側に強く振った分子とGLP-1側に強く振った分子では、体重減少の程度、血糖への影響、消化器症状の出方、肝脂肪への作用がすべて変わり得ます。スルボデュチドとマズデュタイドが同じカテゴリに属しながら、試験デザインも観察された効果の質感も異なる理由はここにあります。
設計上のもう一つの軸は骨格です。マズデュタイドは、グルカゴンとGLP-1の両方の活性をもともと併せもつ内因性ペプチドであるオキシントモデュリンを出発点にしています。つまり自然界に存在するデュアル活性分子を長時間作用型に改造したアプローチです。スルボデュチドはグルカゴン骨格を基盤に、C18の脂肪酸二酸側鎖を付加してアルブミン結合による半減期延長を図った設計で、週1回投与を可能にしています。
カグリリンチドはこの分類の外にあります。アミリンは食後に膵β細胞からインスリンと共に分泌されるホルモンで、胃排出の遅延と満腹シグナルに関与します。カグリリンチドはその長時間作用型アナログであり、インクレチン受容体には作用しません。したがってGLP-1受容体作動薬と併用したときに機序が重ならないという点が、この分子の開発上の論拠になっています。
実務的な含意としては、比較記事や製品説明で「デュアル」「トリプル」という語だけが強調されている場合、どの受容体をどのバランスで狙っているのかを確認する価値があります。受容体の数は性能指標ではなく、設計上の選択にすぎません。
なぜGLP-1に加えてグルカゴン受容体を狙うのか?
グルカゴンは一般に「血糖を上げるホルモン」として知られているため、体重管理を目的とする薬剤がグルカゴン受容体を刺激すると聞くと直感に反します。しかし生理学的には、グルカゴンは肝臓での脂肪酸酸化を促し、エネルギー消費を増やし、肝臓の脂質貯蔵を減らす方向にも働きます。デュアルアゴニストの仮説は、GLP-1側の作用(食欲低下と胃排出遅延によるエネルギー摂取の減少、およびインスリン分泌のグルコース依存的な促進)がグルカゴン側の血糖上昇作用を相殺し、残るのはエネルギー消費の増加と肝脂肪の減少である、というものです。
この仮説の魅力は、体重減少の「質」に関わる点にあります。摂取カロリーを減らすだけの機序では、体重減少の一部は除脂肪体重の減少として現れます。エネルギー消費側にも働きかければ、同じ体重減少でも組成が異なる可能性がある、という考え方です。ただし、これは現時点では仮説であって証明された臨床的優位性ではありません。実際、スルボデュチドの第3相では体脂肪だけでなく除脂肪量の減少も報告されており、「筋肉を守る」といった単純化された説明は裏付けられていません。
肝臓への作用はより直接的なデータがあります。グルカゴン受容体は肝細胞に高密度に発現しており、デュアルアゴニストによる肝脂肪の低下は複数の試験で観察されています。このためスルボデュチドは肥満だけでなくMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)を独立した適応として開発されてきました。
一方でリスクも理論上存在します。グルカゴン受容体刺激は血糖を上昇させ得るため、特に糖尿病を併存する集団では血糖管理への影響を慎重に評価する必要があります。また心拍数の上昇やアミノトランスフェラーゼの変動など、GLP-1単剤では前面に出にくい項目が監視対象になります。これらは各試験の安全性評価項目として設定されており、承認審査の中心的な論点になります。
要約すると、グルカゴン受容体の追加は「効果を強くするため」というより「効果の質を変えるため」の設計選択であり、その臨床的な価値はアウトカム試験で決まります。
3分子を並べると何が見えるのか?
以下の表は、2026年9月時点で公表されている情報に基づく比較です。数値はすべて査読付き論文で報告されたものであり、企業のプレスリリースのみを根拠とする数値は含めていません。
| 項目 | スルボデュチド | マズデュタイド | カグリリンチド |
|---|---|---|---|
| 標的受容体 | グルカゴン受容体+GLP-1受容体(デュアル) | グルカゴン受容体+GLP-1受容体(デュアル、オキシントモデュリン骨格) | アミリン受容体系(カルシトニン受容体を含む)。インクレチン受容体には作用しない |
| 開発企業 | Boehringer Ingelheim(Zealand Pharmaと提携) | Innovent Biologics/Eli Lilly(中国主導) | Novo Nordisk |
| 到達フェーズ | 第3相(SYNCHRONIZE試験群) | 第3相完了、中国で承認取得済み | 単剤は第2相中心。配合剤CagriSemaとして第3相完了 |
| 主な公表ヒトデータ | 第2相肥満試験(46週)、第2相MASH試験(48週)、第3相SYNCHRONIZE-1(n=725、76週) | 第3相GLORY-1(n=610、NEJM 2025)、第3相GLORY-2(9 mg、60週、JAMA 2026) | 第3相REDEFINE 1(n=3,417、68週、単剤群を含む4群比較) |
| 規制ステータス | いずれの国でも未承認 | 中国NMPAが2025年6月に体重管理、2025年9月に2型糖尿病で承認。米欧日では未承認 | 単剤はどこでも未承認。CagriSemaとして2025年12月に米国FDAへ申請 |
| 未確立の点 | 心血管アウトカム、長期安全性、体組成への長期影響 | 中国人集団以外での有効性と安全性、長期アウトカム | 単剤での長期的位置づけ、併用時の寄与度の定量 |
この表から読み取るべき最も重要な事実は、3分子のうち承認されているのはマズデュタイドだけであり、その承認も中国国内に限られるという点です。スルボデュチドは第3相の主要結果が出た段階、カグリリンチドは単剤として承認申請すらされていません。
もう一つの含意は、フェーズが同じでも比較可能性が同じではないことです。マズデュタイドの第3相は中国人集団を対象としており、他の民族集団への外挿は自動的には成り立ちません。REDEFINE 1のカグリリンチド単剤群は世界規模の集団で評価されていますが、それは配合剤の寄与度を分離するための比較群であって、単剤開発を目的としたものではありません。
スルボデュチドはどこまで進んでいるのか?
スルボデュチド(開発コードBI 456906)は、Boehringer IngelheimがZealand Pharmaと共同で開発しているグルカゴン受容体/GLP-1受容体デュアルアゴニストです。週1回皮下投与を想定した分子で、分子量は約4,231.7 g/mol、分子式はC₁₉₂H₂₈₉N₄₇O₆₁とされています。
ヒトでの最初のまとまったデータは第2相の用量設定試験です。le RouxらがLancet Diabetes & Endocrinology誌(2024年、12巻162-173頁)に報告した46週間の無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、糖尿病を併存しないBMI 27 kg/m²以上の成人を対象に、0.6 mgから4.8 mgまでの用量が検討されました。割り付けられた薬剤を実際に受けた集団の解析では、体重変化は4.8 mg群で18.7%、3.6 mg群で16.7%、2.4 mg群で13.6%、0.6 mg群で6.8%の減少、プラセボ群で2.3%の減少でした。4.8 mg群の55%が15%以上の体重減少に到達しています。
肝臓領域では、SanyalらがNew England Journal of Medicine誌(2024年)に48週間の第2相MASH試験を報告しています。生検でMASHと線維化ステージF1からF3が確認された成人を対象に、2.4 mg、4.8 mg、6.0 mgまたはプラセボを週1回投与した試験で、肝脂肪含量の30%以上の減少はスルボデュチド群で57%から67%に認められたのに対し、プラセボ群では14%でした。線維化の悪化を伴わないMASHの改善という主要評価項目でもプラセボに対する優越性が示され、第3相への移行根拠となりました。
第3相の主要結果は2026年に公表されました。le RouxらによるSYNCHRONIZE-1(NEJM 2026年)は、14か国116施設で糖尿病を併存しない肥満成人725名を登録した76週間の試験です。平均年齢47.1歳、ベースライン平均BMI 37.9、平均体重108.8 kgという集団で、76週時点の体重変化はtreatment-regimen estimandで3.6 mg群が12.2%減、6.0 mg群が13.0%減、プラセボ群が5.4%減でした。5%以上の体重減少に到達した割合はそれぞれ72.6%、71.9%、46.3%です。
ここで注意が必要なのはエスティマンド(解析方針)の違いです。投与を中断した参加者を含めて評価する解析と、投与を継続できた参加者に焦点を当てる解析では、同じ試験から異なる数値が算出されます。企業発表と論文の数値が食い違って見える場合、多くはこの違いに由来します。試験間で数値を比較する際は、同じエスティマンドどうしで比べる必要があります。
2026年9月時点で、スルボデュチドは米国、欧州、日本を含むいずれの国でも承認されていません。心血管アウトカム試験を含む開発プログラムが継続中です。
マズデュタイドはなぜ中国で先に承認されたのか?
マズデュタイド(IBI362 / LY3305677、maxdutideという表記も流通しています)は、オキシントモデュリンを骨格とするグルカゴン受容体/GLP-1受容体デュアルアゴニストです。Eli Lillyが創製した分子を中国のInnovent Biologicsが中国圏で開発する体制がとられ、その結果として臨床開発の重心が中国にあったことが、承認の順序を説明します。
登録試験となったのがGLORY-1です。JiらがNew England Journal of Medicine誌(2025年、392巻2215-2225頁)に報告したこの第3相試験では、BMI 28 kg/m²以上の肥満、またはBMI 24 kg/m²以上28 kg/m²未満で肥満関連合併症を1つ以上もつ中国人成人610名が、マズデュタイド4 mg、6 mgまたはプラセボの週1回皮下投与に無作為割り付けされました。32週時点の体重変化率は4 mg群で10.09%減、6 mg群で12.55%減、プラセボ群では0.45%の増加でした。5%以上の体重減少に到達した割合はそれぞれ73.9%、82.0%、10.5%です。48週時点の腹囲減少は4 mg群で9.12 cm、6 mg群で10.72 cmと報告されています。
より高用量を検討したのがGLORY-2です。JAMA誌(2026年)に報告されたこの第3相試験は、27施設でBMI 30以上の中国人成人を対象に、マズデュタイド9 mg(n=308)またはプラセボ(n=154)を2対1で割り付け、60週間投与しました。主要解析対象461名において、60週時点の体重変化は9 mg群で16.65%減、プラセボ群で1.50%減でした。腹囲、収縮期血圧、脂質指標の改善も報告された一方、消化器系の有害事象は高頻度に発現しています。
規制面では、ShirleyがDrugs誌(2025年、85巻1621-1627頁)にまとめているとおり、マズデュタイドは2025年6月に中国NMPAから初回承認を取得しました。適応はBMI 28 kg/m²以上、またはBMI 24 kg/m²以上で体重関連の併存疾患を1つ以上もつ成人の長期体重管理です。さらに2025年9月には成人2型糖尿病の血糖コントロールに対する適応も承認されています。これはグルカゴン/GLP-1デュアルアゴニストとして世界初の承認にあたります。
ただしこの承認は中国国内に限られます。米国FDA、欧州EMA、日本の規制当局のいずれもマズデュタイドを承認していません。加えて、第3相の登録集団が中国人成人に限定されている点は解釈上の制約です。ベースラインBMIや体組成、併存疾患の分布が異なる集団に同じ有効性と安全性プロファイルがそのまま当てはまるとは限らず、地域拡大には追加の臨床試験が必要とされます。
カグリリンチドはこの比較のどこに位置するのか?
カグリリンチド(AM833)は、この3分子のなかで唯一インクレチン系ではない分子です。長時間作用型のアミリンアナログであり、分子量は約4,409 Da、分子式はC₁₉₄H₃₁₂N₅₄O₅₉S₂とされています。作用点が異なるため、GLP-1受容体作動薬と併用しても機序が重複しないという設計上の利点があります。
臨床開発の主軸は単剤ではなく、セマグルチドとの配合剤CagriSemaです。GarveyらがNew England Journal of Medicine誌(2025年)に報告した第3相REDEFINE 1試験では、糖尿病を併存しないBMI 30以上(または27以上かつ肥満関連合併症を1つ以上もつ)成人3,417名が、カグリリンチド2.4 mgとセマグルチド2.4 mgの併用、セマグルチド単剤、カグリリンチド単剤、プラセボの4群に68週間割り付けられました。体重変化は併用群で20.4%減、セマグルチド単剤群で14.9%減、カグリリンチド単剤群で11.5%減、プラセボ群で3.0%減と報告されています。消化器系の有害事象は併用群の79.6%、プラセボ群の39.9%に認められ、多くは一過性で軽度から中等度でした。
規制上の位置づけは明確です。カグリリンチドは単剤としていずれの国でも承認されていません。CagriSemaとしては2025年12月に米国FDAへ承認申請が行われましたが、2026年9月時点で承認には至っていません。
カグリリンチドについては専用の詳細ガイドを用意しているため、本記事では比較上の位置づけにとどめます。作用機序、試験データ、併用の考え方についてはカグリリンチドの完全ガイドをご覧ください。研究用途での濃度計算にはカグリリンチド用の計算ツールが利用できます。
セマグルチドやチルゼパチドと何が違うのか?
最も大きな違いはエビデンスの成熟度です。セマグルチドとチルゼパチドは複数の第3相試験に加えて心血管アウトカム試験のデータをもち、複数の地域で承認され、市販後の使用経験が蓄積されています。本記事の3分子はいずれもその段階に達していません。マズデュタイドは承認を得ていますが単一国であり、使用経験の蓄積はこれからです。
機序面では、受容体の組み合わせが違います。セマグルチドはGLP-1受容体のみ、チルゼパチドはGLP-1受容体とGIP受容体です。スルボデュチドとマズデュタイドはGIPではなくグルカゴン受容体を組み合わせており、これは代謝への作用の方向性が異なることを意味します。GIPは脂肪組織の代謝と悪心の軽減に関わるとされるのに対し、グルカゴンはエネルギー消費と肝脂肪代謝に関わります。したがって「チルゼパチドの上位互換」という表現は機序的に成立しません。カグリリンチドに至っては比較軸そのものが違い、置き換えではなく上乗せを想定した分子です。詳細な比較の考え方はチルゼパチドのガイドとレタトルチドとチルゼパチドの比較記事で扱っています。
数値を直接比較したくなりますが、試験間比較には注意が必要です。試験期間(46週、48週、60週、68週、76週とばらつきます)、登録集団(民族、ベースラインBMI、糖尿病の有無)、用量漸増スケジュール、エスティマンド、併用する生活習慣介入の強度がすべて異なります。唯一直接比較が可能なのは同一試験内の群間比較であり、REDEFINE 1におけるセマグルチド単剤群の14.9%減という数字は、同じ試験の中でのみ他群と比較できます。
実務的な結論として、現時点で「どれが最も効果が高いか」という問いに科学的に答えることはできません。答えられるのは「どの分子がどの受容体を狙い、どの試験でどの数値が報告されたか」までです。直接比較試験(head-to-head)が公表されるまで、順位づけは推測の域を出ません。
安全性について何が分かり、何が分かっていないのか?
3分子に共通して最も頻度が高い有害事象は消化器症状です。悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛が中心で、用量漸増期に集中し、多くは軽度から中等度で一過性と報告されています。REDEFINE 1では併用群の79.6%に消化器系有害事象が認められ、プラセボ群でも39.9%に認められました。スルボデュチドのMASH試験でも悪心、下痢、嘔吐がプラセボより高頻度でした。GLORY-2でも消化器症状は高頻度です。これはクラス全体の特徴であり、詳細はGLP-1受容体作動薬の副作用に関する記事で解説しています。
グルカゴン受容体デュアルアゴニストに特有の監視項目としては、心拍数の上昇、血糖コントロールへの影響、肝酵素の変動が挙げられます。これらは試験プロトコルで明示的に評価されており、承認審査でも中心的な論点になります。現時点で公表されている第2相および第3相のデータからは、重大な新規の安全性シグナルは報告されていませんが、試験期間が最長でも76週から68週程度であることを踏まえると、長期安全性は未確立と表現するのが正確です。
特に確立されていない項目を列挙します。
- 心血管アウトカム:体重や代謝指標の改善が心筋梗塞や脳卒中の減少に結びつくかは、専用のアウトカム試験でしか示せません。3分子いずれについても結果は公表されていません。
- 体組成への長期影響:スルボデュチドの第3相では体脂肪だけでなく除脂肪量の減少も報告されており、長期的な筋量と骨密度への影響は評価途上です。
- 投与中止後の経過:GLP-1系薬剤では中止後の体重再増加が知られていますが、これらの新規分子について十分なデータはありません。
- 他集団への外挿:マズデュタイドの第3相は中国人集団が対象です。他の集団での有効性と安全性は別途検証が必要です。
- 併用と相互作用:他の代謝系薬剤との併用データは限定的です。
重要な注意:これらの分子は医療従事者の管理下で実施される臨床試験の中で評価されています。本記事に記載した用量はすべて試験プロトコル上の数値であり、推奨用量ではありません。自己判断での使用は、消化器症状による脱水、血糖異常、その他の予期しない有害事象のリスクを伴います。健康上の判断は必ず医師または薬剤師にご相談ください。
規制上のステータスと入手に関する注意点は?
2026年9月時点の規制状況を整理します。マズデュタイドは中国NMPAから体重管理(2025年6月)と2型糖尿病(2025年9月)の適応で承認を取得しています。これはグルカゴン/GLP-1デュアルアゴニストとして世界初の承認ですが、承認地域は中国に限られます。スルボデュチドはいずれの国でも承認されていません。カグリリンチドは単剤としてどこでも承認されておらず、セマグルチドとの配合剤CagriSemaが2025年12月に米国FDAへ申請された段階です。
したがって、米国、欧州連合、日本のいずれにおいても、この3分子を医薬品として合法的に処方できる状況にはありません。市場で「研究用(research use only)」として流通している素材は、医薬品としての品質、純度、無菌性、含量の保証を受けていません。純度証明書が添付されていても、それは第三者による恒常的な品質管理を意味しないという点は理解しておく必要があります。
法的な扱いは国と地域によって大きく異なり、研究用試薬としての販売が許容される地域、輸入が規制される地域、個人使用が明確に違法とされる地域があります。居住地の規制を確認する責任は購入者側にあります。規制状況は頻繁に更新されるため、本記事の記載は執筆時点のスナップショットとしてお読みください。
関連する背景知識として、GLP-1の生理学、レタトルチドの開発状況、および再溶解計算ツールを用意しています。
医療上の免責事項:本記事は教育および情報提供のみを目的としており、医学的助言、診断、治療の代替となるものではありません。記載された分子は本記事で明示した中国での1件を除き、各国の規制当局によってヒトへの使用が承認されていません。体重管理、糖尿病、肝疾患に関するいかなる判断も、資格をもつ医療従事者にご相談のうえ行ってください。
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よくある質問
スルボデュチド、マズデュタイド、カグリリンチドのうち、承認されているのはどれですか?
maxdutideとmazdutideは違う薬ですか?
グルカゴン受容体を刺激すると血糖が上がるのではないですか?
スルボデュチドの第3相ではどれくらいの体重減少が報告されましたか?
これらはチルゼパチドやレタトルチドより効果が高いのですか?
カグリリンチドはなぜ単剤ではなく併用で開発されているのですか?
これらの分子で最も多い副作用は何ですか?
日本でこれらを使用することはできますか?
参考文献
- le Roux CW, Steen O, Lucas KJ, Startseva E, Unseld A, Hennige AM (2024). Glucagon and GLP-1 receptor dual agonist survodutide for obesity: a randomised, double-blind, placebo-controlled, dose-finding phase 2 trial. The Lancet Diabetes & Endocrinology.
- Sanyal AJ, et al. (2024). A Phase 2 Randomized Trial of Survodutide in MASH and Fibrosis. New England Journal of Medicine.
- le Roux CW, Wharton S, Startseva E, et al. (SYNCHRONIZE-1 Investigators) (2026). Survodutide Once Weekly for the Treatment of Adults with Obesity. New England Journal of Medicine.
- Ji L, et al. (2025). Once-Weekly Mazdutide in Chinese Adults with Obesity or Overweight (GLORY-1). New England Journal of Medicine.
- GLORY-2 Investigators (2026). Treatment With 9-mg Mazdutide for Weight Reduction in Chinese Adults With Obesity: The GLORY-2 Randomized Clinical Trial. JAMA.
- Shirley M (2025). Mazdutide: First Approval. Drugs.
- Garvey WT, Blüher M, et al. (REDEFINE 1) (2025). Coadministered Cagrilintide and Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity. New England Journal of Medicine.
- Jastreboff AM, Kaplan LM, Frías JP, et al. (2023). Triple-Hormone-Receptor Agonist Retatrutide for Obesity - A Phase 2 Trial. New England Journal of Medicine.