マズデュタイド(IBI362)とはどのような薬剤ですか?
マズデュタイド(mazdutide、開発コード IBI362 / LY3305677)は、GLP-1受容体(GLP-1R)とグルカゴン受容体(GCGR)の両方を同時に刺激する、週1回皮下投与のペプチド医薬です。もともと米国のイーライリリーが LY3305677 として創製した化合物で、2019年に中国における開発および商業化の権利を信達生物製薬(Innovent Biologics)がライセンス取得しました。中国国外の権利はリリーが保持しており、米国での臨床開発もリリー主導で進められています。中国における販売名は「信尓美(Xinermei)」です。
化学的には、天然の腸管ホルモンであるオキシントモジュリンを鋳型とした類似体にあたります。供給業者の化学データシートによれば、分子式は C₂₁₀H₃₂₂N₄₆O₆₇、分子量は約 4563.06 g/mol で、34アミノ酸残基の骨格を持ちます。2番目の残基は酵素分解に強い非天然アミノ酸 Aib(アミノイソ酪酸)に置換され、リジン側鎖には AEEA リンカーを介して C20 の二塩基性脂肪酸(エイコサン二酸)が結合しています。この脂肪酸鎖が血中アルブミンと可逆的に結合することで消失が遅くなり、週1回という投与間隔が成立しています。セマグルチドやチルゼパチドでも用いられている、確立された半減期延長の設計手法です。
開発上の位置づけとしては、単一受容体に作用する第1世代のGLP-1受容体作動薬から、複数の代謝系ホルモン受容体を同時に標的とする薬剤へという流れの中にあります。この系統全体の見通しについては次世代インクレチン薬の全体像をまとめたガイドも参照してください。マズデュタイドが注目される最大の理由は、GLP-1に加えてグルカゴン受容体を意図的に刺激するという点であり、これは同じ仕組みを採るスルボデュタイド(survodutide、BI 456906)と共通します。
本記事は教育目的の情報提供であり、診断や治療の指針ではありません。マズデュタイドは処方薬であり、投与の適否は医師のみが判断できます。体重や血糖に関する治療を検討している方は、必ず医療専門職に相談してください。
GLP-1とグルカゴンの二重作動はどのように働くのですか?
マズデュタイドの作用は、二つの異なるホルモン経路の組み合わせとして理解されます。GLP-1受容体側の作用は、既存のGLP-1受容体作動薬と同じです。すなわち、血糖依存的なインスリン分泌の促進、グルカゴン分泌の抑制、胃内容排出の遅延、そして視床下部を介した食欲抑制です。これらが合わさって摂取エネルギーが減少します。
一方のグルカゴン受容体側の作用は、一見すると矛盾して見えます。グルカゴンは本来、肝臓での糖新生とグリコーゲン分解を促して血糖を上げるホルモンです。しかし同時に、肝臓でのエネルギー消費の増加、脂肪分解の促進、脂肪酸酸化の亢進といった作用も持ちます。デュアルアゴニストの設計思想は、GLP-1成分による強力な血糖低下作用がグルカゴンの血糖上昇作用を打ち消し、残るエネルギー消費側の効果を体重減少と肝脂肪減少に活かすという点にあります。つまり、摂取を減らす(GLP-1)と消費を増やす(グルカゴン)という二方向からの介入です。
この設計には生物学的な根拠があります。オキシントモジュリンは、ヒトの体内で食後に分泌され、GLP-1受容体とグルカゴン受容体の両方に弱く作用する天然のデュアルアゴニストです。マズデュタイドはその構造を出発点に、受容体への親和性と血中安定性を最適化した化合物にあたります。
臨床データにもこの機序を反映した所見が見られます。GLORY-1試験の探索的解析では、ベースラインの肝脂肪含有量が5%以上であった参加者において、48週時の肝脂肪含有量の平均変化率は4 mg群で -63.26%、6 mg群で -73.18% であった一方、プラセボ群では +8.20% でした。体重減少だけでは説明しにくい大きさの変化であり、グルカゴン成分の肝臓への直接作用が寄与している可能性が議論されています。
ただし、グルカゴン受容体の刺激は利点だけをもたらすわけではありません。心拍数の上昇、過度のカタボリック(分解)作用、肝酵素や血糖に対する個人差のある反応などが理論的な懸念として挙げられます。GLORY-1では48週時の心拍数の平均変化が4 mg群・6 mg群ともに +2.6 拍/分と報告されており、長期的な心血管系への影響については、まだ専用のアウトカム試験が完了していません。
中国ではいつ、どの適応で承認されたのですか?
マズデュタイドは、中国国家薬品監督管理局(NMPA)から2025年6月27日に最初の承認を取得しました。適応は、食事管理と運動量の増加との併用による成人の長期体重管理で、対象は BMI 28 kg/m² 以上、または BMI 24 kg/m² 以上で体重関連の併存疾患を1つ以上有する成人です。この BMI 基準は、アジア人集団における肥満および過体重の診断基準が欧米より低く設定されていることを反映しています。この承認により、マズデュタイドは世界で初めて承認された GLP-1/グルカゴン デュアルアゴニストとなりました。
続いて2025年9月19日、NMPAは第2の適応として成人2型糖尿病の血糖管理を承認しました。これも、この作用機序の薬剤としては世界初の糖尿病適応の承認です。製薬専門誌 Drugs の承認レビューでも、適応範囲と承認時期についてこの内容が確認されています。
さらに高用量である9 mgについては、中等度から重度の肥満を対象とした追加申請(一部変更申請)がNMPAに受理され、本稿執筆時点(2026年10月)では審査中とされています。したがって、中国で現在処方可能な用量と、臨床試験で検討されている最大用量は同一ではありません。
重要な点として、これらの承認はいずれも中国国内に限られます。日本、米国、欧州連合のいずれにおいても、マズデュタイドは承認されていません(2026年10月時点)。規制上の位置づけは国・地域ごとに大きく異なるため、居住国の規制を確認する必要があります。
GLORY-1試験は何を示しましたか?
GLORY-1(ClinicalTrials.gov識別番号 NCT05607680)は、中国の過体重または肥満の成人を対象とした第3相無作為化二重盲検プラセボ対照試験です。結果は2025年に New England Journal of Medicine 誌に掲載され、中国で開発された代謝・内分泌領域の新薬の臨床試験が同誌に掲載された初の例として報じられました。
試験には610例が組み入れられました。対象は18歳から75歳で、BMI 28 kg/m² 以上の肥満、または BMI 24 kg/m² 以上 28 kg/m² 未満で体重関連の併存疾患を1つ以上有する成人です。参加者の平均年齢は34.2歳で、欧米の肥満症治験の典型的な集団より若い構成でした。参加者はマズデュタイド4 mg、6 mg、またはプラセボの週1回皮下投与に無作為に割り付けられ、投与期間は48週、その後12週の投与終了後観察期間が設定されました。
主要評価時点である32週において、ベースラインからの体重変化率の平均は4 mg群で -10.09%、6 mg群で -12.55%、プラセボ群で +0.45% でした。5%以上の体重減少を達成した割合はそれぞれ73.9%、82.0%、10.5%でした。48週時点では、体重変化率は4 mg群で -11.00%、6 mg群で -14.01%、プラセボ群で +0.30% と報告されています。
体重以外の指標でも一貫した方向の変化が示されました。腹囲、収縮期血圧、トリグリセリド、非HDLコレステロール、LDLコレステロール、血清尿酸値などの心代謝リスク因子が改善し、前節で述べた肝脂肪含有量の大幅な低下も探索的解析で観察されています。
忍容性については、有害事象による投与中止の発生率が4 mg群で1.5%、6 mg群で0.5%、プラセボ群で1.0%と低く、重篤な有害事象の発生率もプラセボと同程度でした。もっとも、この試験は48週という期間であり、心血管イベントや死亡といった硬いアウトカムを評価する設計ではありません。
高用量(GLORY-2)と米国第2相試験の結果はどうでしたか?
GLORY-2は、より高い9 mg用量を中等度から重度の肥満を有する中国人成人で検討した第3相試験です(NCT06164873)。結果は JAMA 誌に掲載されました。中国の27施設で2023年12月から2025年11月にかけて実施され、461例が2対1の比率でマズデュタイド9 mgまたはプラセボに割り付けられ、低カロリー食と身体活動の増加を併用しながら60週間投与されました。参加者の平均年齢は34歳、平均体重は94 kg、平均BMIは34で、16%が2型糖尿病を併存していました。
60週時点の平均体重減少は、マズデュタイド群で -16.65%、プラセボ群で -1.50% でした。腹囲、収縮期血圧、トリグリセリド、非HDLコレステロール、LDLコレステロール、血清尿酸値といった主要な副次評価項目も達成されたと報告されています。
中国国外での開発も進んでいます。Lancet Diabetes & Endocrinology 誌に2026年に掲載された米国実施の第2相試験では、米国24施設で2型糖尿病のない成人179例(BMI 30 kg/m² 以上、または27 kg/m² 以上30 kg/m² 未満で体重関連の併存疾患を1つ以上有する)が、プラセボまたはマズデュタイド(3から6 mg、10 mg、16 mg)の週1回投与に48週間割り付けられました。32週時点の体重変化率の平均は、3から6 mg群で -7.3%、10 mg群で -15.6%、16 mg群で -18.1%、プラセボ群で -0.9% でした。
この試験は用量と効果、そして用量と忍容性のトレードオフを明確に示しています。16 mg群では有害事象による投与中止が20%に達し、その主な原因は消化器系の有害事象でした。より高い用量がより大きな体重減少をもたらす一方で、脱落率も上昇するという関係は、インクレチン系薬剤全般に共通する課題です。
なお、初期の用量探索データとしては、第1b相試験(eClinicalMedicine、2022年)で10 mgコホートの16週時の体重変化率が -9.5%(プラセボ -3.3%)、第2相試験(Nature Communications、2023年、248例)で24週時の体重変化率が3 mg群 -6.7%、4.5 mg群 -10.4%、6 mg群 -11.3%(プラセボ +1.0%)と報告されています。ここで挙げた用量はすべて医師の監督下にある臨床試験の条件であり、推奨用量ではありません。
DREAMS試験では2型糖尿病にどのような結果が出ましたか?
2型糖尿病を対象とした開発プログラムは DREAMS と名付けられており、2つの第3相試験の結果が Nature 誌に相次いで掲載されました。肥満と糖尿病の両領域で同一分子を評価する、現在のインクレチン系開発の典型的な構成です。
DREAMS-1 は単剤療法としての評価です。320例(平均HbA1c 8.24%、平均BMI 28.2 kg/m²、平均糖尿病歴1.9年)がマズデュタイド4 mg、6 mg、またはプラセボに1対1対1で割り付けられ、24週間投与されました。24週時のHbA1c変化は4 mg群で -1.57%、6 mg群で -2.15%、プラセボ群で -0.14% で、プラセボとの差はそれぞれ -1.43% と -2.02%(いずれも P < 0.0001)でした。体重変化率は4 mg群 -5.61%、6 mg群 -7.81%、プラセボ群 -1.26% でした。
DREAMS-2 は実薬対照試験です。経口血糖降下薬による治療を背景療法とする2型糖尿病の成人731例(平均年齢51.8歳、平均HbA1c 8.22%、平均体重76.95 kg)が、マズデュタイド4 mg、マズデュタイド6 mg、またはデュラグルチド1.5 mgに1対1対1で割り付けられ、28週間投与されました。28週時のHbA1c変化量について、マズデュタイドの両用量はデュラグルチド1.5 mgに対して非劣性かつ優越性を示し、最小二乗平均の治療群間差は4 mgで -0.24%、6 mgで -0.30% でした。体重減少についてもマズデュタイド群で有意に大きい結果が報告されています。
臨床的に意味があるのは、これが同系統薬との直接比較であるという点です。試験間の数値を横並びに比べる間接比較と異なり、同一の試験集団・同一のプロトコルの中で比較されているため、結論の信頼性が高くなります。ただし対照はデュラグルチド1.5 mgであり、現在より広く用いられているセマグルチドやチルゼパチドではありません。セマグルチドとの直接比較試験は中国で進行中です。
どのような副作用が報告されていますか?
マズデュタイドの副作用プロファイルは、GLP-1受容体作動薬に共通する消化器症状が中心です。ほとんどは軽度から中等度で、用量漸増期に集中して発生し、維持期には頻度が低下する傾向があります。
もっとも詳細な数値が公表されているのは高用量を検討したGLORY-2試験です。同試験では、嘔吐が53.1%(プラセボ群1.3%)、悪心が46.9%(同3.2%)、下痢が39.4%(同6.5%)に報告されました。発生頻度は高い一方で、有害事象による投与中止はマズデュタイド群2.9%、プラセボ群0%にとどまり、多くの参加者が症状を乗り越えて投与を継続できたことを示しています。
より低い用量を用いたGLORY-1では、有害事象による投与中止は4 mg群1.5%、6 mg群0.5%、プラセボ群1.0%でした。頻度の高い有害事象は悪心、下痢、嘔吐で、重篤な有害事象の発生率はプラセボと同程度でした。一方、米国の第2相試験では16 mg群の20%が有害事象により投与を中止しており、用量が上がるにつれて忍容性の壁が明確になります。
グルカゴン受容体への作用に関連して注目されるのが心拍数です。GLORY-1では48週時の心拍数の平均変化が4 mg群・6 mg群ともに +2.6 拍/分でした。この程度の上昇はGLP-1受容体作動薬全般でも観察されますが、グルカゴン成分を持つ薬剤では長期的な意義の評価が特に重要になります。このクラス全体に共通する有害事象の整理についてはGLP-1系薬剤の副作用に関する記事も参考になります。
公表されている試験データには限界があります。追跡期間は最長でも60週であり、胆道系疾患、膵炎、筋量の変化、投与中止後の体重再増加といった長期的な論点については、マズデュタイドに特化した十分な長期データがまだ存在しません。消化器症状が持続する場合や脱水の兆候がある場合は、自己判断で対処せず医療機関に相談することが必要です。
中国以外では入手できるのですか?
結論から述べると、承認薬としては入手できません。マズデュタイドの承認は中国に限られており、日本、米国、欧州連合では未承認です(2026年10月時点)。中国国外の権利を保有するイーライリリーは米国で第2相試験を完了しており、その結果は2026年に Lancet Diabetes & Endocrinology 誌に掲載されましたが、これは第3相開発の前段階にあたる知見です。米国やEUでの承認申請および承認の見通しについて、確定した公表情報はありません。
一方で、承認されていない国においても「研究用試薬(research use only)」としてマズデュタイドを表示するオンライン販売が存在します。これらの製品には、規制医薬品としての品質保証がありません。具体的には、表示された含量の正確性、純度、無菌性、エンドトキシン量、不純物プロファイル、保存安定性のいずれについても、第三者による検証がなされていないのが通常です。研究用試薬はヒトへの投与を前提に製造されておらず、ヒトでの使用は意図されていません。
当サイトは、本記事において購入先やアフィリエイトリンクを一切提示しません。これは編集方針上の判断です。未承認の注射用ペプチドを自己判断で使用することには、製品品質の不確実性に加えて、用量誤り、無菌操作の不備による感染、既存疾患や併用薬との相互作用、副作用が生じた際に医学的管理を受けられないという現実的なリスクが伴います。
法的な位置づけも国によって異なります。研究用試薬としての輸入や所持が規制対象となる国、医薬品の個人輸入が原則禁止されている国、競技スポーツのドーピング規制に抵触する可能性がある状況など、判断は居住地と状況に依存します。体重管理や血糖管理の選択肢を検討している場合は、未承認品に頼るのではなく、居住国で承認されている治療について医師に相談するのが唯一の安全な道筋です。
スルボデュタイドやチルゼパチドとはどう違うのですか?
マズデュタイドを理解するには、標的とする受容体の組み合わせで整理するのが分かりやすいです。スルボデュタイド(survodutide、BI 456906、ベーリンガーインゲルハイム)は、マズデュタイドと同じ GLP-1受容体/グルカゴン受容体のデュアルアゴニストであり、機序上もっとも近い比較対象です。チルゼパチドは GIP受容体/GLP-1受容体のデュアルアゴニストで、第3の経路としてグルカゴンではなく GIP を用います。レタトルタイドは GLP-1、GIP、グルカゴンの3受容体に作用するトリプルアゴニストです。
| 薬剤 | 標的受容体 | 開発元 | 主要試験での体重変化(試験条件が異なるため直接比較は不可) | 規制状況(2026年10月) |
|---|---|---|---|---|
| マズデュタイド | GLP-1R + GCGR | Innovent(中国)/ Eli Lilly(中国外) | -16.65%(9 mg、60週、GLORY-2、中国人集団) | 中国で承認、日米欧は未承認 |
| スルボデュタイド | GLP-1R + GCGR | Boehringer Ingelheim | 第2相で -6.2% から -14.9%(0.6から4.8 mg、46週、計画治療解析) | 未承認、第3相進行中 |
| チルゼパチド | GLP-1R + GIPR | Eli Lilly | -15.0% / -19.5% / -20.9%(5 / 10 / 15 mg、72週、SURMOUNT-1) | 複数地域で承認 |
| レタトルタイド | GLP-1R + GIPR + GCGR | Eli Lilly | 第3相開発中 | 未承認 |
この表の数値を単純に比較してはいけません。試験集団が根本的に異なります。GLORY-2の参加者は平均年齢34歳、平均BMI 34 kg/m² の中国人成人であり、SURMOUNT-1は2539例を対象に欧米を中心とした多国籍集団で72週間実施されました。ベースライン体重、人種構成、投与期間、評価時点、統計手法がいずれも違うため、試験をまたいだ数値の優劣判定は科学的に成立しません。チルゼパチドの詳細はチルゼパチドのガイド、トリプルアゴニストについてはレタトルタイドのガイドで扱っています。
機序の観点から言えるのは、グルカゴン成分を持つ薬剤(マズデュタイド、スルボデュタイド)が肝脂肪やエネルギー消費に対して特徴的な作用を示す可能性がある一方、心拍数やカタボリック作用に関する監視がより重要になるという点です。GIP成分を持つチルゼパチドは、消化器系の忍容性において異なるプロファイルを示します。どの組み合わせが臨床的に優れているかは、直接比較試験と長期アウトカム試験の結果を待つ必要があります。
現時点で未解決の科学的論点は何ですか?
第一に、集団の代表性の問題があります。マズデュタイドの第3相エビデンスの中核であるGLORY-1、GLORY-2、DREAMS-1、DREAMS-2はいずれも中国人集団で実施されました。参加者の平均年齢は30代半ばで、平均BMIも欧米の肥満症治験より低い水準です。米国の第2相試験(179例)は非中国人集団のデータを補いますが、規模も期間も第3相の水準には及びません。他の民族集団や高齢者、より重度の肥満における効果と安全性は、今後の試験で確認されるべき事項です。
第二に、硬いアウトカムのデータがありません。現在公表されている試験の評価項目は体重、HbA1c、腹囲、血圧、脂質、肝脂肪といった代替指標です。心筋梗塞、脳卒中、心血管死、腎イベントといった臨床アウトカムを一次評価項目とする専用の長期試験の結果は、まだ公表されていません。代替指標の改善が必ずしもアウトカムの改善を意味しないことは、心血管薬の歴史が示してきた教訓です。
第三に、直接比較が限られています。実薬対照の第3相データはデュラグルチド1.5 mgとの比較(DREAMS-2)のみで、セマグルチドやチルゼパチドとの頭対頭比較の結果はまだありません。セマグルチドとの比較試験は中国で進行中です。それまでは、他剤との優劣に関する主張はすべて間接比較に基づく推測にとどまります。
第四に、投与中止後の経過です。GLORY-1には12週の投与終了後観察期間が設定されていましたが、インクレチン系薬剤では中止後の体重再増加が一般的に報告されており、長期的な体重維持にどのような戦略が必要かは、マズデュタイドについても未解決です。体組成への影響、特に除脂肪体重の変化に関する詳細な画像ベースの解析も、公表データが限られています。
第五に、9 mg用量の規制上の位置づけです。GLORY-2で検討された9 mgは、中国で追加申請が審査中の段階にあり、承認済みの用量ではありません。試験で示された効果と、実際に処方可能な治療の内容を混同しないことが重要です。
医療上の注意: 本記事は教育および情報提供のみを目的としています。診断、治療、投与量に関する助言ではありません。記載した用量はいずれも医師の監督下にある臨床試験の条件であり、個人使用の指針ではありません。マズデュタイドは日本では未承認です。体重管理や糖尿病治療に関する判断は、必ず医師、薬剤師などの医療専門職に相談してください。
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よくある質問
マズデュタイドは日本で承認されていますか?
チルゼパチドよりも効果が高いのですか?
グルカゴン受容体を刺激すると血糖が上がらないのですか?
投与を中止すると体重は戻りますか?
脂肪肝(MASLD)に効果がありますか?
最も多い副作用は何ですか?
「研究用」として販売されているマズデュタイドは安全ですか?
筋肉量は減りますか?
参考文献
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- GLORY-2 試験研究グループ (2026). Treatment With 9-mg Mazdutide for Weight Reduction in Chinese Adults With Obesity: The GLORY-2 Randomized Clinical Trial. JAMA.
- DREAMS-2 試験研究グループ (2026). Mazdutide versus dulaglutide in Chinese adults with type 2 diabetes. Nature.
- DREAMS-1 試験研究グループ (2026). Mazdutide versus placebo in Chinese adults with type 2 diabetes. Nature.
- Shirley M. (2025). Mazdutide: First Approval. Drugs.
- 第2相試験研究グループ (2023). A phase 2 randomised controlled trial of mazdutide in Chinese overweight adults or adults with obesity. Nature Communications.
- 米国第2相試験研究グループ (2026). Efficacy and safety of mazdutide in adults with obesity or overweight: a US-based, multicentre, phase 2, randomised, placebo-controlled clinical trial. The Lancet Diabetes & Endocrinology.
- Ji L, Gao L, Jiang H, et al. (2022). Safety and efficacy of a GLP-1 and glucagon receptor dual agonist mazdutide (IBI362) 9 mg and 10 mg in Chinese adults with overweight or obesity: a randomised, placebo-controlled, multiple-ascending-dose phase 1b trial. eClinicalMedicine.
- le Roux CW, et al. (2024). Glucagon and GLP-1 receptor dual agonist survodutide for obesity: a randomised, double-blind, placebo-controlled, dose-finding phase 2 trial. The Lancet Diabetes & Endocrinology.
- Jastreboff AM, Aronne LJ, Ahmad NN, et al. (2022). Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity (SURMOUNT-1). New England Journal of Medicine.